国際協力を考える

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国際協力と地域おこしと「キャパシティー・ディベロプメント」

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近年、開発援助分野で注目されている「キャパシティー・ディベロプメント」という言葉がある。

 

キャパシティー・ディベロプメント(Capacity Development)とは?

 

キャパシティー・ディベロプメント(Capacity Development)は、日本語では「能力開発」とも訳されます。

 

簡単にいうと、地域の人々が限られた環境の中で、自らの力を用いて目標を達成し問題を解決していくプロセスのことです。

 

キャパシティ・ディベロップメント(CD)の概念化・理論化に最も早くから取り組んでいる国際機関の一つである国連開発計画(UNDP)は、キャパシティを「個人・組織・社会が、期待される役割を果たし、問題を解決し、目標を設定してそれを達成する、自立発展的な能力」、CDを「個人・組織・社会がキャパシティを獲得し、高め、維持していく経時的な過程」と定義している。また、日本政府の援助機関であり、被援助国のCDを重視する国際協力機構(JICA)によると、CDとは「途上国の課題対処能力が、個人、組織、社会などの複数のレベルの総体として向上していくプロセス」である。
このように、CDの定義にはいくつかのバリエーションが見られるが、多くに共通するのは、被援助国自身の自立的な問題解決能力の獲得・向上・維持(主体性・自立性)に焦点を当て、個人、組織、制度・社会という複数のレベルにおける総合的な能力向上(複層性・包括性)を重視する視点である。

(※Webio辞書より引用) 

 

 国際協力とキャパシティー・ディベロプメント

 

国際協力機構(JICA)は、キャパシティー・ディベロプメントを「途上国の課題対処能力が、個人、組織、社会などの複数レベルの総体として向上していくプロセス」と定義しています。

 

なお、「キャパシティ」は、問題解決能力や目標設定・達成能力と定義されています。(JICA 2006)

 

キャパシティー・ビルディング(Capacity Building)

 

従来の人材開発や組織形成への協力においては、能力開発は「キャパシティー・ビルディング(Capacity Building)と呼ばれる個人と組織に焦点を置いた北から南への一方的な知識の移転の側面が重視されていました。

 

しかし、1990年代、主要援助機関によって途上国に対する技術協力を中心とした開発援助の見直しと評価が行われたことを契機に、個人や組織に加えそれを取り巻く現地の社会や制度を含めた包括的なキャパシティー・ディベロプメントや潜在能力までを含めた総合的な能力を内側から強化する考え方が重要視されるようになりました。

 

これは、限られた期間でプロジェクトを完遂し成果を生み出そうとすると、眼に見える建物や施設の建設、外部者が企画した集会の数やそれへの住民参加の度合いを評価する基準とし、事業形成の過程に参画する現地のキャパシティーを軽視してしまい、その結果、プロジェクトが持続しないというケースが多発したからです。

 

地域おこしとキャパシティー・ディベロプメント

 

上記のように、キャパシティー・ディベロプメントという言葉は、途上国への外発的な援助に対する批判から生まれた言葉なのですが、これは日本の農村地域にもその概念は適用可能です。

 

日本の農村地域は、過疎高齢化が進行する一方で、地方分権化の推進により自立的に地域を維持し活性化する能力を持つように求められています。

 

多くの地域づくりの事例では、それが事業として始まるときに、行政や外部者がほとんどお膳立てをするため、住民は作られた枠組みへの参加となってしまうことも多いのです。

 

先進国か途上国かにかかわらず、「地域」は自立的、持続的に発展する能力を内側から強化する必要があると言われますが、その方法は必ずしも確立されているわけではありません。

 

そのため、事例の交換が重要な役割を担っているのが現状です。

 

※参考文献

 

 日本の農村における、地域おこしの詳しい事例が多く紹介されている一冊が、こちらの「地域をつなぐ国際協力」です。