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なぜ貧しい国が存在するのか。それは、裕福な国々が彼らに貧困を望んでいるからだよ

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なぜ貧しい国が存在するのか?

 

これだけ世の中が豊かになり、本来なら全人類が食べていけるだけの食糧は存在するというのに、なぜ貧しい国とそうでない国がいまだに存在するのか?

 

これに対する答えを、中村文則さんの小説「教団X」の中の登場人物高原(幼少期に飢餓を体験し、国際的な飢餓に強く関心を持つ)の言葉の中に見つけた。

 

貧しい国が存在するのは、裕福な国々がそう望んでいるから?

 

※以下、書籍より引用

 

石油が出れば、その国は豊かになる?

 

まずアフリカのある国で資源が、たとえば石油が発見されたとする。その王が石油の採掘権を裕福な国々に認めればそのまま関係は続くが、拒否すれば、裕福な国々はその国の貧しい人間たちを集め反政府組織をつくらせ、武器を援助し紛争を発生させる。

メディアには「民族的対立」や「独裁政権の圧政」なんかの言葉を流しておく。

紛争で大勢の人間が死に、親が死んだことで大勢の子供が孤児となり、その国はさらに貧しくなる。自分たちが援助する反政府組織に王を倒させ、その彼らを新しい王や政府に置く。そして石油を手に入れる。さらに、その王や政府は自国の貧民たちを考えるタイプであるより、賄賂にまみれた悪人であることが望ましい。王に賄賂を与え、その国の石油を有利に手に入れることができるから。

たとえば、アフリカのとある貧国の王の個人資産は5000億円という途方もないものだった。それは総人口約6600万人のその国のGDPの半分以上の額だった。その王の背後には西側の大国がいた。

石油が出ればその国は豊かになる。普通はそう思う。でもそれは、その国の政府や政府機関がきちんと機能していればの話。原油が出れば、その国は石油依存の道をひた走る。まず原油が出たことでその国の通貨の価値が急激にあがり、原油以外のその国の輸出産業が壊滅的な打撃を受ける。原油は採掘すると、地価の圧力で地上にせりあがってくる。バルブを取り付けパイプラインに流していくのだけど、破損することで多くの田畑は完全に死に絶える。無数の農家が路頭に迷う。原油の採掘による雇用創出は、実は工業製品をつくる雇用創出よりはるかに少ない。石油に関わる人たちの利益だけが急増していく。裕福な国々は、少しでも有利に石油を手に入れたい。原油を所有する政府や政府機関は賄賂や腐敗でズブズブにしておきたい。

 

ODAの資金の行方は?

 

でも、やがてその国の貧しさが世界的に問題になり、援助という話になる。

ODAと呼ばれるもの。ODAは、裕福な国々の税金から出る。このODAを巡って、裕福な国々の企業達が暗躍する。

わかりやすい例を言えば、国際社会から多額の公的援助がとある貧国に送られる。でもその援助はその国のトップと、その下の政府機関たちの小遣いとなって貧民にちゃんと行きわたらないこともある。こんなデータがある。ある貧国の財務省が支出した、農村診療所のための援助金のうち、実際に診療所に届いたのはそのうち1%以下だった。もっと言えば、多額の公的援助は、裕福の国々の銀行に巧妙に入ってしまうこともある。貧国はそこから金を引き出す、という形。貧国のトップやその周辺が本来貧民のために使うべきだった金を西欧諸国の銀行に隠してしまう。当然西欧諸国の銀行は儲かる。

 

貧しい国が存在してくれれば、裕福な国々はODAを出しやすい。

 

 貧しい国が存在してくれれば、裕福な国々はODAを出しやすい。

 それは裕福な国々の公共事業として終わることもある。きちんと機能しているODAが大半だと思いたいが、そうではない場合もある。

たとえば会社Aが、ODAの資金を使って、貧国で何かをする。貧国もおこぼれをもらえるが、利益の大半はその会社Aが受け取る。ODAという名の公共事業。ODAの資金の何パーセントかが、そのまま裕福な企業に入る構図。貧しい国がいてくれればいてくれるだけ、企業達はODAから利益を得ることができるともいえる。

 

現在、地球の食料はすべての人間に行き渡っても有り余る。

 

農業に目を向けてみる。食糧不足、というのは嘘で、実は地球の食糧は現在、すべての人間達に行き渡っても有り余るほどの量がある。

裕福な国々は、自国の農家に多額の補助金を払っている。補助金で余裕のある国の農業は、安い価格で農作物を輸出することができる。そして、そんな農作物がアフリカに流れ込む。アフリカの農家は、裕福な国々が提供する安い農作物に価格の面で対抗できない。

なぜ裕福な国々は自国の農業に補助金を与えて守るのだろう?

理由は簡単で、農家たちの集合体は民主主義の選挙において集票マシーンになることができ、また、戦争などに備え、どの国も自国の食料自給率を上げたい。でもそんな補助金によって支えられた安い食べ物がアフリカに大量に輸出されれば、アフリカの農家たちがダメージを受けることも彼らはちゃんと知っている。

 

貧困は、意図的に創り出されている。

 

ここにもカラクリがある。そうやってダメージを受けた農家たちが、今度は別の農業をやるようになるから。別の農業をやらせたいから。つまり、裕福な国々にとって都合のいい農業を。たとえば、コーヒー。チョコレート。そういったものを大量に作らせ、大量に作らせることで価格を下落させ、裕福な国の企業達がそれらを安く輸入していく。俺たちが自分たちの国で得る安いものは、そういった貧しい国の農家たちの劣悪な賃金体系の下に成り立っていることがある。

アフリカで飢餓が起こる。アフリカはもう自給自足の農業ができないからそうなる。でも飢餓が起これば裕福な企業達にとっては都合がいい。世界各国が援助しようとするから。アフリカの農家たちは自分たちで飢餓を払しょくできる力が本来あるのに、構造的に貧困の中に埋め込まれていくことになる。

つまり貧困は、裕福な国によって、意図的に創り出されている。

 

貧困の撲滅のチャンスは?

 

でも、ここ数年は状況が変わってきている。たとえばアフリカを、裕福な国たちは「開発」しようとしている。アフリカの一部の国に、ぽつぽつだけど中産階級も生まれ始めている。安い労働力でこき使うだけでなく、世界は市場を探していて、世界はアフリカに「消費国」の役割も負わせようとしている。上手くいけばでも、これは貧困の撲滅につながる。アフリカに市場を求めるならアフリカを裕福にしなければいけないから。でもまた企業たちが搾取に走ればアフリカはもう永久に貧しい。今がチャンスなんだ。

 

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